フリンジサービスで来店価値を高める
私が今ハマっているドラマは、TBS系列で放送されている日曜劇場シリーズです。中でも「半沢直樹」や「下町ロケット」そして現在放映中の「陸王」です。すべて池井戸潤氏の原作です。「陸王」は老舗の足袋製造業者がランニングシューズの開発に挑戦する奮闘ぶりが魅力です。その第4話を見ている時、先日あるパチンコ店の店長さんと話していた内容を思い出したので紹介したいと思います。
まず陸王第4話では、マラソンランナーにシューズを提供する大手シューズメーカーが巨額の投資を行い最新技術とビッグデータを駆使してシューズを開発していきます。要はデータが全てという考えの基に開発が進められます。しかし、ランナーの走るフォームや足の具合を日々観察しながら、そのランナーに合ったシューズを提案するシューズカウンセラーという専門職の方が、体形や体調が日々変化する生身の人間が履くシューズをデータだけが全てと開発するシューズと会社に疑問を持ち・・・とドラマは進んでいきます。
新台を導入すればお客様が来てくれて、机上のデータだけで充分なパチンコ業界の景気が良い時代は確かにありました。でも今はどうでしょうか?新台を入れてもお客様が来ない店舗は結構あります。パチンコ店の商品は遊技機です。そのコア(核)となる商品をいかにお客様に楽しんで頂くかが大事になるのではないでしょうか。先日話したパチンコ店の店長さんは、以前はデータが全ての考えだったそうです。しかしお客様と向き合うようになってデータだけではお客様を満足させることは不可能だと気付いたそうです。お客様から回らないとクレームがあっても、以前は「データで見ると他の台より回ってるんだけど」と終わらせていました。しかし今では自分で玉を打ってみて、スランプの時間が結構長い事など、お客様がストレスを感じている部分が見えてきたと話していました。今では新台に限らずアウトが低い遊技台なども細かくチェックしていると言います。
よく数字は嘘をつかないと言われます。もちろん数字も大事ですが、その数字を作っているお客様をよく観察する事も、その数字の背景を把握することも今では大事になります。まさにシューズカウンセラー後者の考え方なのです。
前置きがすごく長くなりましたが、本題はここからです。
サービスの2本柱としてコアサービスとフリンジサービスがあります。コア(核)とは、お店が提供する価値本体のことでパチンコ屋であれば遊技台ということになります。フリンジとは、本体の価値を高めお客様に満足以上の感激、あるいは感動を提供する手段の事です。双方それぞれが重要な役割を持っています。イメージ的にはゆで卵を輪切りにした時の黄身がコアで、周りの白身がフリンジです。一般的にコアサービスは価格と連動すると言われ、その価値に対してお客様は対価を支払います。この構図がパチンコ店でも当てはまるかというとそうではないと感じています。しかしながら、パチンコ店のコアは遊技台でありお店に来てくれたお客様が遊技して初めて対価が発生します。まずはコアサービスをしっかり提供できなければならないのは当然のことですが、このコアサービスだけでは当たり前の顧客満足までにしか至りません。
一方、フリンジサービスが優れているとお客様に喜びや感動を提供できる場合があります。また、せっかくコアサービスが優れているのに、フリンジサービスがダメだとお客様に不満足を提供してしまう可能性もあります。
では、自分のお店でフリンジサービスといえば何でしょうか。確定した正解はありません。最近、新規会員が取れない、会員リピート率が低いと相談を受けます。遊技台に向き合う時間が長く顧客との接点が少ないパチンコ店の場合、フリンジサービスの層が薄いと贔屓客も作りにくいのです。
ここで、私たちがホールで行う物販催事について考えてみます。私たちは単に旬の果物や肉・魚を販売している訳ではありません。私たちは参加してくれるお客様一人ひとりのご家庭で、買った商品を家族みんなで食べたり「美味しいね」と言い合ったり、そのような家族団欒の背景を創造しながら商品を選定し、またそのようなお話をお客様とコミュニケーションを取りながら提供しています。その価値に共感して頂いたお客様からは「前回買った干物、家族みんな美味しいって言って食べたよ」など、嬉しいお言葉を多く頂いています。お客様に対して心に触れるようなサービスを提供し、贔屓客になってもらう機会を提供しています。
現に私たちを利用しているホール様では新規会員獲得数や会員リピート率など大きく増客に成功しています。
コア・フリンジの双方が大切と上でも書きましたが、どんな業種業界でもコアサービスで売上利益を作ることに間違いはありません。そこに行きつくまでのプロセスにフリンジサービスを通して考えてみる事も必要かもしれません。お客様の来店動機形成には、コア以外でも作れる可能性は大いにあるのですから。